タッチセラピーコラムVol. 18|「正中線を越える動き」とは?発達にどう関わる?
正中線を越える動きとは
3歳から4歳になると身体の両側を同時に使う動きを習得しますが、この動きを「正中線を越える動き」とよびます。片方の手、足、目をもう片方の手、足、目の位置に動かすことのできる能力のことです。
左手を右ひざにタッチしたり、右手を左ひざにタッチ。これを交互に行う。
フリスビーを右手で持ち、体の左側に一度構え、右手で投げる。
ほかにも、肘を掻く、脚や腕を組むなどのような正中線を越える動きを私たちは日常的に行っています。この運動は、左右の脳の連携を発達させ、様々な運動能力や認識能力の適切な発達のために重要です。
正中線を越える動きをするのが苦手な子どもは、読み書き、日常の身の回りのケア、スポーツや身体を使うことが苦手な場合がよくあります。これらの動きをするときには、左腕と右脚、または右腕と左脚を同時に使う必要があるからです。
「働く手」と「補助する手」の役割がはっきりしてきたら、脳が成長し側性化しているという印です。正中線を越える動きができているということを意味します。
「働く手」と「補助する手」が支え合って能力を発揮するためには、左右の脳がコミュニケーションをとりあう必要があります。正中線を越える動きを避ける子どもは、左右のコーディネーションが苦手です。絵を描き、色を塗り、字を書き、食事をし、物を投げるときなどに、利き手がまだ定まらずに両手を使っている場合がおおくみられます。
正中線を越える動きの重要性
身体的にも、脳にとっても正中線を越える動きはとても重要です。この動きが足りないと左右の脳の連携がうまくいきません。左右の脳には、それぞれ異なった役割があるため、脳梁を通して左右が連携し、学習と動きを調整することが重要なのです。利き手で正中線を越える動きは、利き手の手先が器用になるための訓練になります。
正中線を越える動きを避けると、両手がほぼ同じ割合で動かされ、そのために利き手の発達が遅れ、手先が本来ほど器用にならないかもしれません。
両側能力が発達しない子どもへの影響
発達の遅れがある子どもの多くは、正中線を越える動きが自然にできません。取ろうとする物に近い方の手を使うことが多く、これが利き手の発達と左右の脳の連携活動の発達の遅れに繋がります。
正中線を越える動きが苦手であると、読書力が弱くなります。左右の眼球は、ページの左右を追って動きますが、正中線にくると動きを止め、まばたきをして焦点を再度あわせなくてはなりません。この時にどこまで読んだかがわからなくなってしまうことが多いのです。書くことにも影響があり、左から右へ字を書く場合、斜めの線が正中線を通過するときに紙の途中で持ち手を変えなくては書けないことがあります。
また、両手を使っている場合が多いので手先が器用にみえることがありますが、実は神経プロセスの問題をかかえているのです。左右の脳の連携が弱く、そのためにコーディネーション能力や運動調整能力が低く、上位能力を獲得するのが難しくなります。このような子どもたちは、多くの場合どちらの手も不器用です。
正中線を越える動きを促すタッチセラピーや活動・遊び
正中線を超える動きを効果的におこなうために、様々な両手を使ったアクティビティーをぜひタッチセラピーや活動、普段の遊びに組み込みましょう。
★次回は、正中線を越える具体的なタッチや活動についてご紹介します。
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第1回:子どもの睡眠とタッチセラピー
第2回:施術の同意を得る重要性
第3回:タッチの役割〜絆と愛着〜
第4回:子ども向けマッサージ・タッチを親に指導するメリット
第5回:ベビーマッサージvs小児マッサージ:何が違うの?
第6回:子どもたちの感覚統合とタッチについて
第7回:小児タッチセラピストってどんな仕事?
第8回:ティナ先生新書「赤ちゃんのためのマッサージ」
第9回:【小児タッチセラピー】特別な診断を受けた子たちへの利点
第10回:災害時に対応する子どもへのタッチ
第11回:【Q&A】ダウン症・痛覚鈍麻・自傷行為のあるお子さんへのタッチセラピー
第12回:ベビーマッサージに関するQ&A
第13回:医療施設でのタッチによる刺激
第14回:小児タッチセラピーにおける【5つのP】
第15回:【A Work of Heart.】に込められた、ティナ先生の想い
第16回:Don’t Quit Your Daydream!
第17回:医療現場でのタッチセラピー