タッチセラピーコラム 3/21|小児緩和ケアとタッチセラピー(2)
緩和ケア現場での施術と心構え
〜小児緩和ケア患者と向き合う前に、自問してほしい7つの質問〜
マッサージやタッチセラピーがもたらすポジティブな影響について理解していても、【小児緩和ケア】に携わることが、すべてのマッサージセラピストや医療従事者にとってのキャリアパスとなるわけではありません。
もし、あなたが小児緩和ケアを専門にすることを考えているのであれば、現場に身を置く前にぜひ自分自身に問いかけてほしい質問がいくつかあります。
(1)なぜ、医学的に病弱な子どもたちのために働きたいのか。
小児緩和ケアタッチセラピーを専門とする、セラピストになる動機について考えてみます。
小児緩和ケアは、幼い患者とその家族に心身の癒しとサポートを提供することに努めており、セラピストは通常、終末期をできるだけ穏やかに、苦痛を緩和しながら過ごすことに焦点を当てます。
生命を脅かす病気と闘う子どもたちは、病気の症状から起きる多くの種類の痛みを経験する他にも、痛みを伴う処置を受けています。また残念な現実として、子どもたちの中には必要な疼痛管理を受けられずに亡くなる子も少なくありません。
このような背景から、多くの医療従事者たちは、(タッチセラピーを利用して)子どもたちの痛みを和らげ、残された時間の質を高めることを望んでいます。
ただセラピストの中には、子どもたちとその家族が直面している恐怖や不安といった、小児緩和ケアの現実を理解しきれていないまま、「彼らを助けたい」という一心でこの世界に飛び込もうとする人もいます。残念ながら、「助けたい」という気持ちだけでは何も解決しません。自分の知識と技術を押し付けるだけでは、招かざる客にならざるを得ません。小児患者やその家族が何を求めているのか、それに応えるために必要なことは何か、まずはそこから考えなければなりません。
(2)自分はこの仕事をするための適切なトレーニングを受けてきたか。専門性を高められたか。
セラピストとして病弱児に緩和ケアタッチセラピーを提供する場合、タッチセッションは、発達や健康に問題のない子どもへの施術とは全く異なる目的を持つことになります。
小児の緩和ケア患者に対するタッチセラピーは、専門的なトレーニングを受けた施術者が行うべきです。子どもの健康状態や、現れている症状に合わせてその都度手技を調整し、望ましい結果を得ることができるようにします。
医療現場で子どもが受けている、触覚に携わる処置の多くは、痛みや苦痛、我慢を強いられるものです。決してポジティブな印象を子ども本人に残しません。
だからこそ、タッチセラピーを通じて優しく触れられることが重要です。タッチセラピストはできるだけ軽い圧で、ゆっくりとしたペースを保ちながら優しいタッチを施術する必要があります。
(3)自分自身のセルフケアは確立されているか。
多忙なスケジュールにより、多くの医療従事者にとって自分自身を労わる「セルフケア」は優先順位が低くなってしまうことがあります。緩和ケアタッチセラピーの施術者は、クライアントの安全や安心に常に気を配ると共に、まずは自身の心の健康を優先させなければなりません。
飛行機に乗っているとき、自分の酸素マスクを最初に装着するように、私たちは誰かを助ける前に、まず自分自身を守らなければならないのです。
ストレスの兆候がないか、自分の心の健康状態を観察する。
自分の強みや、自分の限界を認識して、健全なバランスを保つ。
悲しみや喪失感に対処する方法を準備する。
セルフケアは、燃え尽き症候群や共感疲労のリスクが高い小児タッチセラピストや医療専門家にとって非常に重要です。人によって異なる対処法を持っていることが多いですが、具体的な対策を準備して、丁寧に対処することで、レジリエンスが高まり、同時にストレスによる身体的・精神的な影響も軽減されます。
(4)自分には適切なサポート体制が用意されているか。
一般的にも、人が生きていく中で自分を支えてくれる人がいることは必要不可欠ですが、小児緩和ケアに携わる場合、特に悲しみに直面した際には、適切なサポート体制が絶対に欠かせません。
「適切なサポート体制」とは、あなたが信頼し、あなたを助け、慰めてくれる人々で構成されているものです。あなたが必要とするときに、あなたの面倒を見たり、心の支えや知恵、力を与えてくれる人たちです。励ましてくれる人、思いやりのある人、慈愛に満ちた人の輪に囲まれてください。
悲しみの中で、感情はたかぶり、混乱し、疲れ果ててしまうことがあります。このようなときに、自分の考えを話したり、共有できる人がいると助かります。時には自分から助けを求めることも必要です。また、他の人のポジティブなエネルギーを吸収して自分の心が救われることも大いにあるでしょう。
(5)特殊な状況の中で、子どもやその家族に対する対応が難しいと感じたら、どうするべきか。
多くのセラピストや医療従事者は、一般的なタッチセラピーの介入を提供する資格を持ちながらも、緩和ケアに身を置く子どもたちに対する適切な手技やアプローチの方法について、悩みを抱えていることがあります。
小児患者の周辺に多くの管や医療機器がある中で、施術者はこの状況で自分に出来ることは何なのか、わからなくなってしまうと不安を口にすることがあります。
また一方で、終末期が近い子どもたちにどのような声をかけたらいいのか、子どもの方から”自分はいつ良くなる?”、”自分が死んだらどうなるの?”といった難しい質問をされた際、どう対応するのがベストなのか、葛藤を抱え得ている専門家も少なくありません。
(6)小児緩和ケアをめぐる倫理を理解しているか。
小児緩和タッチセラピストと他のタッチセラピストとの本質的な違いの一つは、死と死にまつわる自分の感情、恐れ、信念に向き合う必要があることです。
死を迎える子どもたちと接することで、緩和タッチセラピーの施術者は、動揺しているか否かにかかわらず、これらの問題に直面することを余儀なくされます。小児緩和ケアを提供するすべての専門家は、自分の限界を知り、安全かつ偏見のない環境を与えながら、小児患者が死に対する不安に直面するのを支える立場にならなければなりません。
(7)自分自身とクライアントとの、境界線を維持するための準備はあるか。
特殊な感情を伴う状況で仕事をする場合、私たちは常に、自分自身とクライアントとの健全な境界線について意識し続ける必要があります。セラピストは、クライアントである小児患者が、穏やかな終末期を過ごせるよう、一つでも多くのポジティブな経験をと一生懸命に考えるあまり、必要以上に要望に応え、結果として一線を越えてしまうことがあるのです。
小児緩和ケアのタッチセラピーでは、圧や体位の調整、枕の調整、身の回りの物の要求への対応、休息を取ること、特定の音楽を聴くことなどが許容範囲とされています。
タッチセッションにおいて、全体の把握も大切ですが、セッションを構成するピースひとつひとつを考慮しなければなりません。時には、単純な要求をクライアント側から受けることもあるかもしれませんが、ひとつずつを考えてみると、要求の中には私たちの専門外なものもあることに気づかされます。
※ ※ ※ ※
小児緩和ケアの患者さんにタッチセラピーを提供することを考えるならば、まずは時間を取り、これらの質問と向き合えるゆっくりとした時間をとりましょう。
小児タッチセラピーの実践について知識を増やすだけでなく、その現場を選ぶ責任と覚悟を再認識しましょう。
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この講座は、医療従事者に向けたものだと考えている方がとても多いのが事実ですが、ティナ先生は、医療従事者に限らず、タッチセラピーを実践している・または実践したい全ての人に、必要だと考えています。
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