タッチセラピーコラム 7/25|【国際活動】グローバル・アウトリーチ・プログラムについて②

 「国際的医療支援:グローバル・アウトリーチ・プログラム」は、国際リドルキッズ協会の活動の3本柱のひとつです。

1️⃣ タッチセラピーの指導及び指導者養成
2️⃣ 小児病院でのタッチセラピープログラム開発
3️⃣ 国際的医療支援(グローバル・アウトリーチ・プログラム)

グローバル・アウトリーチ・プログラムでは、必要な医療ケアが受けられない子どもたち、孤児たち、また子ども以外でも特別な医療ニーズを持っている方々に焦点を当てています。

 

活動について詳しくは、こちらのコラムをご一読くださいね。

タッチセラピーコラム 5/23|【国際活動】グローバル・アウトリーチ・プログラムについて①

今回は、日本人のリドルキッズ卒業生で”グローバル・アンバサダー・チーム”の一員として選ばれ、タッチセラピーの意味とその偉大な力をインドで伝えてきた、甲斐万智子さんへのインタビューです。

アンバサダーチームに参加しようと思った理由を教えてください

ティナ先生のアウトリーチの活動報告を読み、「私も参加してみたい!」と強い思いに駆られたのがキッカケです。

現地ではどんな活動を行いましたか?

5か所の地域で、盲学校や孤児院、児童養護施設、スラム街、支援学校を訪ねました。施設や行政と連携したイベントも行い、身体障がいや発達障がいのある子どもたちにタッチケアをしました。また子どもたちに関わる職員や親御さんにもタッチケアをお伝えしました。

心に残った経験はありますか?

インドはカースト制度が廃止されたとはいえ、またその制度は根強く残っています。スラム街に住むアウトカーストの人(カーストにも入れない身分の低いとされる人)が身分の違う人に触れられ経験はまずないそうです。

それは、身分の低い人が高い人を汚してしまうという考え方があるからです。ましてや外国人に触れられるなんて驚きだと、ほとんどの人が戸惑いをあらわにされました。

スラム街でのタッチ

訪問までの緊張感

スラム街に行く日、ティナは参加メンバーに言いました。

「アクセサリーはすべて外し、服装はシンプルに。タトゥーは隠す。髪型もシンプルにまとめる。ドレッドヘアも布で覆って隠して。ウェットティッシュは持たない。消毒ジェルと虫よけの小さいものだけはOK。お水を持っていく人は商品名などのラベルもはがして、なるべく何も持たないで行きます」

こんなにも細かい指示に、まったく違う世界に行くのだなとあらためて感じ、緊張もしました。

ボディガードが付きましたが、私たちの乗ったバスがスラム街の近くに着いた途端、若い男性がどんどん集まってきて、私たちをいぶかしそうにみる様子が印象的でした。

ティナ先生からは「必ずみんなで固まって行動すること」とも言われます。

長屋のような場所を通っている間に感じる視線は、歓迎されているとは思えない突き刺さるものでした。

普段集会に使われているような広場には敷物が敷かれ、子連れのお母さんが集まっていました。 衛生状態がわからないため、教えることに徹し、「直接は触れないように」と言われてタッチケアの指導をはじめます。

あるママとの出会い

3-4人でチームとなり、10人くらいのお母さんたちの前でやり方を見せます。なかには赤ちゃんが小さくて、何もできずに見ているお母さん(Aさん)もいました。

「こんなお母さん(Aさん)にこそタッチケアを伝えたいな」という強い思いが湧いてきます。

「私、あのお母さん(Aさん)の後ろでタッチケアをしてあげたい」と同じチームのメンバーに伝えると、 「ティナに直接は触れない方がいいって言われたのを忘れたの?」といなされてしまいます。

しばらくタッチ指導を続けましたが、そのお母さん(Aさん)を見るとやっぱり触れたくて仕方ありません。

「やっぱり私、彼女に触れたい!」

そのとき、別のチームでママたちに触れているメンバーが視界に入りました。

「ほら、ママたちに触れているチームだっているよ!」

 あるママのタッチでの変化

「じゃぁティナに聞いてきて。私は判断できないから」 チームメンバーに言われます。

ティナに聞きに行くと、「お母さんが望むならやってあげてもいいよ」と言われ、

私はAさんの後ろに回り、 「触れていい?」と聞くとAさんは一瞬戸惑った様子でした。

でも「だからこそ、タッチの良さを伝えたい」とも思います。

同時に自己満足だと思いましたが「身分の差なんて関係ないんだよ」ということも伝えたかったのです。

「触れるね」ともう一度Aさんに伝えて触れ始めました。 最初は触れられることに対して戸惑いと緊張でグッと身体に力が入り、その気持ちを背中で伝えてきました。

しかし最初の愛情のこもったタッチを始めると緊張は徐々に緩み、だんだん受け入れてくれているのを感じました。

チームのメンバーも私の様子を受け入れてくれました。

その場の空気がふんわりとあたたかくなり、笑顔が出てきます。

貧困層の方たちは母国語しか話せないため、英語が通じません。

だから私は、日本語で話しかけながらジェスチャーでコミュニケーションをとりました。

指でOKサインや親指を立てながら「上手にできている!」「気持ちいい?」と伝えると、笑顔でうなずいていてくれました。

タッチでみんなが笑顔に

終わってから、チームの輪を乱したことをメンバーに謝ると、「私たちもやりたかったけど、ティナの指示なしではいけないと思ったから。キッカケをありがとうね」とハグができました。

メンバーも、参加された方も、そこにいたみんなが笑顔でした。

塀の外からは男性や子どもたちが会場の様子を覗き込んでいました。彼らは、タッチケアのワークの光景を見て、何かポジティブなものを感じていたように見受けられてうれしかったです。

スラム街から出るとき、同じ道を通る私たちに向けられた視線は、行きとはちがって、とても温かいものを感じました。

立場や言葉、文化を越えて「触れる」という行為がステキなことだと私自身、身をもって感じました。

また別のスラム街でのワークでは、参加された方が近所の方に、さっそくタッチをしていたのをカメラマンが発見した話でみなが盛り上がりました。

子どもたちに直接タッチケアを届ける機会もたくさんありました。このプログラムでは、保護者に伝えることでタッ チの機会が広がっていくことを実感でき、とても満たされた気持ちになりました。

今後、チームに参加してみたいと考えている人へアドバイス

私が最初に出会った大きな壁が、募金を募るということでした。本プログラムでは、各人が SNSなどで自分の渡航費や必要経費の募金を募るというミッションがあります。

インドへ行くのは早々に決めた私でしたが、募金はすんなりとは進みませんでした。今でこそクラウドファンディングがメジャーになってきていますが、 当時は今ほど選択肢がなかったので、正直しんどさを感じました。でも意を決して、熱意やその立ちどまっている現状などもすべてありのまま伝えることで、なんとか目標を達することができました。

この行くまでの準備経験もとても勉強になり、アウトリーチに行く前に大きく成長させてもらえたなと思っています。

また日本人参加者が一人だけだったので、言葉の壁を感じたときもありますが、気の合う人は必ずいます。 今はスマホの翻訳機能もありますよね!

一生の財産となる経験を手に入れるかどうか、それは自分の思いひとつです。

ティナと一緒じゃなかったら出会うことのなかった人たちと触れ合えたことは、私の人生の何よりの経験と財産です。

 「どないかなる!」

一番大事なのは、本当に行きたいかどうか。その気持ちがあるかどうかだけだと思います。

 

 

甲斐さんのブログレポートはこちら